「兄貴、この前言ってた内緒話だけどさ」
亮真が唐突に言った。食卓に両親の姿はなかった。今日も仕事で遅れるようだ。
「ああ、飯島先輩のこと好きなんでしょ?結構前から気づいてたよ」
「え、う、嘘、バレてたの!?」
「まあな。本人は気づいてないだろうけど。廃工場に来たのもメモ見て先輩のこと心配になったからだろ」
せめて本人の口から話させてやろうかと思ったが、弟を弄るのはやはり楽しかった。
「兄貴は柚子さんのこと」
「何回言わせる気だ」
そう言って二人は笑った。
事件解決に一役買った「内緒話」だ。笑って受け入れるのも悪くはない。優真はそう思った。