工場から出たした優真は柚子と亮真と共に自宅へ帰った。柚子まで呼び寄せた理由は無論今回の事件の真相を突き止めるためである。
「まずは私の家に手紙が届いたとこからだね」
状況を再認識すべく、柚子が口火を切った。
「お父さんの財布を浦和高校前に落とせ。中身は抜くなって書いてあったけど、どうせ判らないだろうから少しだけ抜いたみたい。個人情報の類いはバレそうだから抜かなかったよ。背に腹は変えられないって言って」
「場所を指定してるなら何か意味があるんだろうな」
「時間は指定された?」
亮真が質問した。
「されてない、お父さんは通勤するとき浦和高校前を通るからそのときに落としたって言ってた」
その答えを聞いた亮真が地図を広げた。
「柚子さんの家に一番近いのは宮ノ川高校。なのに浦和高校を指定したのは……」
「時間帯を特定するためだな。通勤時間や道を調べておけば財布を簡単に回収出来るし、夜通しで監視する必要もない」
「じゃあ通勤するときに落とさせるために浦和高校を選んだってこと?」
「それだったらもう少し人通りの少ない場所の方が回収しやすいはずだよ。高校を選んだ理由もあるはずだ」
三人は地図を凝視した。すると、優真の目に「交番」の二文字が留まった。
「財布を交番に届けさせるため?」
「確かに交番が向かいにあれば届けに行きやすいだろうけど……それ、意味無いような‥‥」
いまいち納得がいかない、といった表情で柚子が言った。
「ねえ、柚子さんのお父さんが使ってた財布ってどんなのか判る?」
「この前買い換えたばかりだって言ってたよ。凄い高級品だって自慢してた」
「新品の高級財布……狙いはそれかもな」
優真が真剣な面持ちで言った。
「兄貴、その財布拾った人に連絡つく?」
突然亮真が言った。
「竜希か?平気だと思うけど‥」
「ならすぐに連絡して。それで全て判る」