「この大陸の絶対的な頂点である。・・・・ねぇ?
・・・・だっる、読むだけで疲れるとか・・・・無いわー」


草はらに座り込み怠そうに郷土資料の本を読んでいた男は、ポイっとそこら辺に本を適当に投げ、眉間を揉む。


「・・・・くぁ、ねーっみ・・・・やっぱどうも好きになれんなぁ・・・・無理だ無理」


饅頭が二つほどの大きな欠伸をする男はゴロリと寝転びうつらうつらとまどろみながら呟く。

ヤオという男はこの無の國出身でこの國を出ていった男である。

その後に龍の國を造り上げ名を轟かせた。

そして、今や救世主としてこの國の郷土資料に載っている。

しかし、ここの郷土資料に載せるのはお門違いだろう。
だって、その男はすでに龍の國の城主で、この國のとはもう一切関係はないのだから


その疑問は未だ拭えた覚えはない。


寝転んでいる男の名はナキ

彼がいる國は無の國という名の国である。
名は体を表すとはよく言ったもので
無の國は、無名で、無個性で、特産物や観光名所、娯楽施設なども一切無く、これと言った特徴が無いのである。

あるのは田んぼと畑と國の象徴である無個性な城、そして勉学を学ぶ寺子屋くらいだ。


そんな無の國にとってはヤオはたった一人の無の國の有名人だ。

この國の存在を主張出来る唯一の存在であった。

だからか、國の者は誰も彼もが彼の偉業を讃えた。
英雄かのように郷土資料にも載っているのだ。


この國のものは大抵ヤオのことを素晴らしい人、と尊敬し、好いている。

しかし、ナキはそんな男が嫌いである。


「一体全体何で皆そこまで好きなのか。到底理解出来ない、する気にもなれん」


そう言う程に、彼はヤオが嫌いであった。