うちに動物が来た

「翼、どうしたの?」

「…別に」


ふい、と私と目も合わせてくれない翼。 はすが帰って人間の姿に戻ってからと いうもの、私と一切目も合わせてくれ ない。

少しだけ寂しかったり。

会って一日も経ってない、でも私の寂 しさを明るい笑顔で埋めてくれた翼。 また一人にはなりたくない。 そう思うと、自然と身体が動いてい た。

「翼、どうしたの。言ってごらん? …お願い」

「…笑わない?」

「笑わないよ」

「……やきもち、やいてた。オレ、葵 がすき、葵がはすと喋ってる時すごく もやもやしてた」

「そっか、」

彼の頬に手を当てて、下から覗き込 む。 しゅんと垂れ下がった耳が、よしよし と宥める様に頭を撫でると少し上に向 いた。 なんて可愛らしい子だろうか。

ぽんぽんと優しく撫でる、レッドブラウンのごわついた髪が精一杯に私の方 に擦り寄ってくる。

「三ヶ月しか葵と居られないんだ…ネコは気まぐれだけど、寂しがりやだか ら」

「…困った猫だなぁ。おいで」

「葵!!葵、葵ー…」

腰に腕を回してくる大きな子供と言える、甘えん坊な翼の髪を撫でる。 胸に顔を埋め、んぅ〜なんて唸ってい る可愛いわが家のネコ。

「明日から学校だけど大丈夫?」

「がっこう??」

「そっちの世界には無いの?色んな事 を教えてもらう所だよ。学校がある時 は、日中家に居ないからね、いい子で お留守番しててね」

「?おるすばん、ちゃんと出来たらな でなでいっぱいしてくれる?」

「うん」

じゃあちゃんとおるすばんしてる!!と 明るい笑顔を浮かべた翼はもっと強く抱きついてきた。