判決。被告人を死刑に処する。

2074年彼は夢であった弁護士となった。
彼が弁護士になると決めたのは中学3年の頃だった。彼は当時かなりの問題児だった。その時点で彼は前科2回。その事やその他もろもろが原因で、5歳年上の兄からはものすごく嫌われていた。彼は人一倍口が強かった。それに彼は法律などを覚えるのも好きだった。その知識を活かしてネットで論破することを趣味としていた。そこで彼は弁護士になろうと考えた。そして弁護士を夢としてちゃんと目指したきっかけは兄が国家資格を取得したことだった。自分のことを散々蔑み続けた兄を越したかったのだ。しかし彼は学力はおろか生活態度は決していいとは言えないもの。高校に行ったが定時。完全な落ちこぼれだった。だが彼は諦めず必死で努力した。そして名門大学の法学部に入学。その3年後の2072年司法試験にみごと合格。2年後弁護士として活動を始めた。
彼はどんな案件でも弁護した。たとえそれが不利なものだと知っても。彼は負け知らずだ。受ける案件を全て勝利で収めていった。しかしそれが悲劇を生んだ。
彼はある日とある案件を受けた。内容は、『連続殺人事件の犯人である17歳少年の弁護』
だった。警察は現場に残ってた被害者の血痕の他少年の血痕も見つけた。その事を根拠に少年を殺人容疑で保護したのだ。しかし彼はそこに疑問点を感じた。少年も被害者の1人である事も可能性としてある。彼は裁判で少年も被害者の1人であり、襲われたときに切られた血痕であることを訴えた。犯人に切りつけられ殺されそうになり、正当防衛として犯人を殺し、それに不安を覚えその場から逃走した。と。事実まだ事件に使用された刃物は見つかっていなかった。少年は証拠不十分で無罪となった。彼はまた1つ戦績に白星を残した。
しかし、その事件の犯人は少年であった。少年は再び事件を起こすこととなる。大型トラックに乗り歩行者天国に乗り込んだのだ。犠牲者およそ100以上。そんな大事件が起きてしまったのだ。
被害者遺族、近辺の住民は少年を早く捕まえて欲しいという願いと同時に、この事件を起こす原因ともなった彼を訴えた。異例ではあるものの被害者遺族達の怒りは収まらず彼は裁判にかけられた。異例だが彼は自分で自分を弁護することを決意した。しかし彼は勝利を確信していた。なぜなら彼は少年を信じ、自分の使命を全うしたにすぎないから。弁護士とはそういうものだから。たとえ犯人を庇おうとも弁護士が訴えられるとこなどまずないからだ。裁判内でも彼は優勢だった。彼はやはり強かった。
いよいよ判決の時。彼には少し現実とは違う未来が見えていた。彼には無罪の声が聞こえていた。しかし現実は残酷だ。
「判決。被告人を死刑に処する」
彼は唖然とした。なぜだ。ふざけるな。理不尽だおかしいなにがどうなっているふざけるな。
実は被害者遺族の一人が裁判長に対し膨大な額の賄賂を渡していた。普通なら彼は勝っていた。しかし金の力には抗えなかった。しかし死刑といっても大半は執行されず終身刑を同じような形になる。だがこれも彼に対しては違った。判決をいいわらされた1週間後。死刑は執行された。それも財力と権力によるものだった。彼はこの世を怨んだ。呪った。この世のために尽くしてきた彼はこの世によって排除されたのだ。なんとも理不尽である。しかしそれが現実なのだ。
その後賄賂受け渡しの件でその被害者遺族と裁判長は裁判にかけられた。しかし賄賂を渡した証拠はなく遺族は無罪。不当な判決をしたとして裁判長は無期懲役。また悪人が笑い善人は泣いた。決して裁判長が善人というわけではないが。だがそれによってある程度秩序が保たれているという事もある。悪人がいるから善人の良心が保っていられる。善人だけの世界など大黒柱のない家同然。いつ崩れてもおかしくないのだ。
最後に一言言わせてもらおう。

世界は残酷だ...故に美しい