16年後。

「ふあー、眠い」

アリス・ベルクーナは欠伸をした。

「ライ、眠くないの?」

「まーね、アリスと違ってキチンと管理してあるんでね、生活を」

最後を嫌味たっぷりにアリスに言うと、ライアン・シュトルムは、周りを見た。

休み時間、北キャンベル魔術学校の1ノAは、がやがやとしていた。

「もうすぐだねライ。
冬ノ氷花祭り」

アリスは、幼馴染のライに言った。
「今年は何食う?アリス」
「ハニーパイと、ドロップケーキバフ定番!」

「ハニーパイは良いけど、ドロップケーキなんてゲキマズだよ」

「ライ、わかってないわねぇ、そんな事言うならライの大好きなロッキークッキーもマズイわよ」

この世界、アンダーワールドには、春夏秋冬に、それぞれの聖花を讃える祭りがある。

魔術の支配する世界で、どんな魔術を使っても、たったの一輪もの花を咲かせることも叶わぬ幻の花は、魔術を増幅することが出来るマナのようなものだ。

そのマナを崇め、祝福を受けるのが四季ノ祭りだった。

「禁忌ノ扉開きたいね.....」
唐突に、アリスが小声で呟いた。
ライは、ギクッとした。
「はぁ!?開いちゃいけねーから禁忌なんだよ」
ボソボソ囁くライの吐息が、直接アリスの耳朶にかかり、アリスはむず痒く、モソモソ、と動いた。
「大丈夫よー、それにアタシたち、もう16だよ?」
「でも......!」

「一生の思い出になるよ!!」

そう言われ、好奇心旺盛なライの好奇心は、やむを得なかった。しぶしぶライは頷いた。
「嫌な予感する....」
そして、このライの呟きはこの後、現実のものとなった