first love

翔の名前をつぶやくと同時に、
涙がこぼれた。


この涙の理由は

久しぶりに会えた嬉しさ？

違う、それだけじゃない。



翔の隣にいたのが、
アヤだったから…？





二人はかつてのあたしたちみたいに仲よさそうに手を繋いで仲良さそうに話してる。


酔っ払ってるのか、
こんな人通りの多い場所でも平気でキスしたりしてる。








見たくない。

なのに、瞬き一つできない。


目が離せない。


涙も止まらない。



嬉しさと悔しさとショック…いろんな感情でぐちゃぐちゃだ。






「美華、あたしちょっと行ってくるから待ってて」

マナミが察して翔の方へと歩き出す。


「やめて！
もう、関わりたくもないから！」

そんなやりとりをしてるうちに、翔はタバコを吸いだしアヤはコンビニの中へ入っていった。




マナミはあたしの手を振り払って翔に近づくなり思いっきり頬を叩いた。


「ってぇ…」

それから、少し離れて見てるあたしの視線に気付いたようだ。


「…美華……」



あたしは何も言えない。
なんの言葉も出てこない。


普通にできない。



「あんたさ！美華がなんで仕事辞めたか分かってるよね？
全部アヤのせいなんだよ！！！
アヤが美華に嫌がらせしてたんだよ！！

あんたと美華の噂も全部そう！

なのに、なんでよりによってあの女？」


マナミはすごい勢いで怒鳴り散らす。




「マナミやめて。
翔、アヤとあたしのこと何も知らないから！
あたし何も話してないし、アヤは翔のただの客なの！！」

あたしからやっと出てきた言葉。



「知ってたよ」

「……へ？」


翔がボソッと言った。


「アヤがお前に何したのか全部知ってる」





……知ってる？

アヤがあたしと翔の噂広めて
あたしたちの邪魔したことも？

あたしに嫌がらせしたことも？





「うっわ、最悪。」

アヤも戻ってきては、気まずい顔をしながらも翔の腕に絡みついた。

「邪魔なんだけど」

「お前ふざけんなよ！
美華にまず謝れよ」

「なんであたしが謝るわけ？
美華さんも今店長と幸せそうでいいんじゃないですかー？」


相変わらずバカにしたような話し方。



肝心なあたしは、
何も言えず、マナミとアヤの言い合いを眺めることしかできない。



自分のことなのに
他人の喧嘩を見てるような感覚。



「俺、今アヤと住んでるんだよ。

美華、いろいろごめんな。
合鍵、家に置いておいたから。」


あたしは頷いた。



「美華、言いたいことないの？
あんた今までアヤに散々…「ない」





もう、いい。

早く帰りたい。


目の前にいる二人を見たくない。