久しぶりの歌舞伎町は半年前と変わってなかった。

明け方でも眠らない街。

酔っ払いのホストやキャバ嬢、
そしてその客。




唯一変わったのは
あの大きな看板。




あそこで微笑んでいたはずのあたしはもういない。


代わりにいたのは

「マイさん…」





分かってた。



「返り咲きなんて言われてるけど、美華がいなくなったからじゃんね。」

マナミが気を遣ってそう言ってくれるけど、

あたしは負けを認めてた。



辞めたいとずっと言ってたマイさん。

やる気もそんなにないくせに

いつも売り上げはあたしと僅差だったし。


マイさんが本気出したらあたしなんて全然だったよ。





「なんか、現実見れてスッキリした」

あたしは笑って、帰ろうと言った。


「美華…もう、本当にいいの?」

「何が?」

「もう歌舞伎町に帰ってこないの?」


あたしは黙った。







今でも思い出すと戻りたくなる。

あんなに煌びやかな世界、ここしかない。


だけど同時に疲れる。

人間関係でできてる街だから。

あたしの一番苦手な部分。






営業はできるのに、
接客はできるのに、

心を開いたことなんてない。




欲しいもの全て手に入れた気になるけど

本当は空っぽになってる。