翔が帰ってこなくなって一週間がたった。


翔のために頑張ってた仕事も、
翔がいないのならなんの意味もない。



あたしは仕事にも行かなくなった。

それどころか一歩も外に出ていない。




心のどこかで翔の帰りを待っていた。








そんな日曜日の朝方、
インターホンが鳴った。



翔かも?と期待するが、家に来たのは店長だった。

違う意味でドキドキした。




店長はソファーに座ってあたしに問いかける。


「仕事、辞めるの?」


あたしは何も答えられない。


「今月もう終わるってのに、今月全然出勤してないよ。
売り上げも…「聞きたくない!」


売り上げがないことなんてあたしが一番分かってる。



「お前さ、これからどうするつもり?」

「ごめんね。
勝手なことばっかして。
店の売り上げも下げちゃったよね」


店長は黙ってあたしを見つめた。


「…なに?」

「うぅん、お前すっぴん可愛いのな」



…それ、翔がよく言うやつ。


「なに、いきなり。」



あたしはソワソワして、タバコに火をつけると店長もあたしからライターを取り自分のタバコに火をつけていた。


「辞めたいなら、辞めればいいよ」




「え?」




店長からの思いがけない言葉にあたしは顔を上げた。



「お前が嫌なら辞めればいいよ。
今までよく頑張ったじゃん」


店長があたしの頭をポンっと撫でた。




…いつからだろう。






毎月No.1とるたびに「頑張ったな」って言ってこうやって店長が頭を撫でてくれた。

あたしはその言葉が欲しくて頑張ってた。







最初はお母さんに知ってもらうために頑張ってた。

いつの間にか店長の言葉が欲しくて頑張ってた。




そして翔に出会って
翔のために頑張ってた。