あたしを育ててくれたのは店長だった。


あたしがこの店に入ったばかりの時は店長もまだ黒服で
あたしを育ててくれた担当だった。





「そんな……やめてよ。」

「お前が恋愛する気ないこと知ってたから今までずっと気づかれないようにしてた。
でも翔のことが好きって言うなら、俺も引き下がれない」



あたしを抱きしめる店長の腕が
小刻みに震えてた。


「…ずっとっていつから?」

「俺が黒服だった時からずっとだよ」


二年間、ずっと……。



「…むりだよ、あたしは翔が… 「お前が翔を好きでも諦めねえ。
お願いだから、翔のとこなんて行くな。
堕ちてくお前を見たくない」



なぜかわからないけど、
涙が出そうになった。




自分でもわかってる。

翔を好きになればなるほど
あたしは間違いなくボロボロになってくだろう。



これからもっともっと傷つくんだろう。








2年間ずっとあたしの親みたいに教育してくれてついてきてくれて、一緒に成長した店長といた方が
きっと傷つくこともない。




でも…



「ごめん、あたしアフター行ってくるね」



あたしはそう言って店長の腕を振り払って店を飛び出した。