「いけてんな〜俺。」



あたしの看板の隣にいたのは
この酔っ払い。




あたしはその看板と隣の酔っ払いを何度も見比べた。
やっぱりこいつだ。




「あんた…一ノ瀬翔?」


「せいかーい!」



歌舞伎町伝説のホストとまで言われている一ノ瀬翔。

この街でこいつを知らない人はいない。


どうして分からなかったんだろうと自分でも驚いてた。


「俺さ、今日誕生日なんだよ」

「No. 1ホストのくせに誕生日1人ってありえないでしょ(笑)」

「バーカ。
俺くらいの人気者になると1人を選んじゃうと嫉妬されちゃうじゃん?
だからあえての1人なんだよ!」

「はいはい…」

あたしは勘付いてた。

どうせこいつはあたしに金があること分かってて自分の客にしようとしてる。

「でも誕生日にあの神崎美華に会えるとはなー!
俺ついてるわ!」

「あのさ、あたしあんたの客にはなんないよ」

誕生日という特別な日にお前といたいなんて言えば女はみんな落ちるとでも思ってるのかもしんないけど、あたしだって夜の女。
分かってる。
その手には乗らない。


「別に俺、そんな客に困ってねーよ(笑)」


「あたし神崎美華だよ。
いくらあんたにでも騙されないから。
営業したって無駄だよ。」


すると一ノ瀬翔はバッグから財布を取り出しあたしに免許証を見せた。


「ほら。
1月7日!
正真正銘俺の誕生日!」





「…ほんとだ…」




あれ…?
じゃあなんで…


「ってゆーかさ、嫌なんだよ、俺。」