「明日の今頃には
わたしはきっと泣いてる
あなたを想ってるんだろう」



なーんて。

この歌は好きだけど、共感なんてしたことない。

そんな恋、あるわけない。





欲望が渦巻く街、歌舞伎町で
そんな純粋な恋愛なんて存在しない。

金と地位のためならなんだってできる。

金のために誰かを愛し、愛される。







「みーちゃーったぁ〜」




突然の背後からの声にあたしはハッと振り向いた。



「さすが神崎美華」


あたしの背後に立っていたのは見たことのある男。


長身に金髪の長めの髪。

…ホスト?
誰だっけ。

見たことはあるのに思い出せない。


そいつは千鳥足であたしに近づき肩に手を回してきた。


「ちょ、やめてよ」


酒臭い……。
完全に酔っ払いだ。


「は?あいつとはキスしてたじゃん」

「それは仕事だから…「キャバ嬢って金もらえりゃーなんでもするんだな」



あたしはそいつを睨みつけた。


「そんなのホストだって一緒でしょ」


するとその男は笑ってみせた。


「ぷっ。
お前何本気になっちゃってんの?」



あたしは突然恥ずかしくなった。


むかつく!むかつくむかつく!!!



あたしは肩に回された手を振り払って早歩きで大通りに向かった。




「お前さー金でなんでも手に入ると思ってる?」

「当たり前じゃん」


あたしは振り向かず言った。

「じゃあお前今、幸せ?」

あたしは無視してタクシーを探した。


めんどくさい酔っ払い。
こっちは仕事で疲れてるのに最悪。



「お前全然幸せそうに見えねーけどな」




あたしの中で何かが切れた。


「あんたさ、黙って聞いてれば…「うっ……」


するとそいつは口に手をおさえ、その場にしゃがみ込んだ。


「ちょっと…こんな大通りで勘弁してよ…」

あたしはハンカチを差し出した。

すると、手を引っ張られていた。


「キャッ…「なーんちゃって」


至近距離でニヤっと笑った。



不覚にもドキッとしてしまったあたし。


「な…なに……」

「ドキッとした?」

「しない!!!」


あたしはその男を振り倒し
大通りに出た。



……何あいつ…。

むかつくむかつくむかつく。


あたしはやっと捕まえたタクシーに乗り込んだ…と思ったら

「ラッキー」

またこいつ。
次はタクシーに乗り込んできた。


「本当いい加減にしてよ!
しつこい!!!」


「お客さん、行き先は…?」



運転手も迷惑そう。


「おまえんちどっち?」

「六本木の方…」

「え?俺も!
方向一緒だから別によくね?」

あたしは言い返す気もわかず、イライラしながら家までの道を説明した。



それからは隣で一人でペチャクチャ話してるこの酔っ払いをシカトしてこの時間でもネオン輝くこの街を車窓から眺めていた。





大きな看板には微笑むあたし。


この看板を見るたびに優越感でいっぱいになる。




あたしに手に入らないものなんてない。





次に目に入ったのは…




「えっ……」