お風呂から上がると翔はあたしを座らせてドライヤーをかけてくれた。


あたしの濡れた長い髪を、翔の指が通っていく。





「お前、スッピンの方が好き」

「あっそう。」



誰にでも言ってそうなその言葉を聞き流すと、翔の顔が近づいてきた。

あたしはそれを拒んだ。


「もう終わり」

あたしがそう言うと、翔は笑った。





「なぁ、美華」

「ん?」

すると翔はあたしを抱きしめた。



「もう終わりだってば」


あたしが離れようとしても、そのきつい腕をほどこうとはしない。

「ずっと俺のそばにいてよ」

「は?」

「ずっと一緒にいて」

「突然なに…」

どんどん強くなるその腕を
あたしはどうすることもできなくてただ身を委ねることしかできなかった。



「翔…痛いよ…」

「でも俺のこと好きにならないで」





あたしは分かってしまったんだ。





翔にハマる女たちの気持ちを。









その吸い込まれそうなほど真っ暗な瞳。


ふざけたことばっかり言うくせに 時々見せるその寂しそうな顔も。



放っておけなくなる。










あたしが恋愛しないのを知ってて近づいてきたんだね。


No. 1だからとか、神崎美華だからとかじゃない。




あんたに必要だったのは
恋愛しない女。寂しさを埋めてくれる女。




それがたまたまあたしだったからってだけ。