2月終わりに近づいていた、
2月24日。





この日、あたしの誕生日。
店内はあたしの客で溢れかえっていた。


酒が強いことがとりえだったあたしも、さすがに今日はベロベロに酔っ払って営業後、黒服達が掃除する中、店内のソファーで酔いつぶれていた。






…何時間たったんだろう。



「美華!美華!!」



聞き覚えのある声に重い瞼を開けた。





「え!??」


綺麗に清掃された店内。
普段暗めの照明が、今は明るくなっていて
あたしはドレスのままソファーに寝そべっていた。

そんなあたしの目に入ったのは





「翔!?」





あたしは驚いてガバッと体を起こした。



「なんでいるの!?」

「なんでって、お前の誕生日じゃん!
俺の誕生日一緒にケーキ食べてくれたお礼に今日はお前を祝いに来た!」

翔はそう言って赤いバラの花束を差し出した。

それからテーブルにワンホールのケーキを出す。





あたしは、純粋に嬉しかった。


花束もケーキも別に特別なことじゃない。

今日だってたくさんの客がしてくれたことだ。






だけど、それより
店でしか誕生日ケーキを食べたことがないと言っていたあたしの言葉を覚えててくれたんだって分かったから。





「嬉しい…。
でももう店閉めるんじゃない?」

そう言ってあたしがキッチンの方を覗くと店長が手招きしていた。


「ちょっと、待ってて。」



あたしは花束を持ったままキッチンにいる店長の方へ駆け寄った。