マイさんはドレスに着替えると更衣室を出て、またキッチンの方で店長と言い合っていた。


「辞めさせてください。」

いつものことだ。




「マイさん毎日ですよねー。
この店もマイさんに執着しすぎでしょ。」

そう言うのは同じキャストのアヤナ。



最近この店に入ってきた新人キャバ嬢。

ド派手な金髪のトップを盛って大きなリボン。
いかにもなザ・キャバ嬢。



「あっ、美華さん。
No. 1おめでとうございまーす♩」


あたしより3つ上の22歳のはずなのにやたらと子供っぽい。

「ありがとうございます」


そう返事をして
着替え終えたあたしは更衣室を出た。

キッチンで店長が大きなため息。




あたしはタバコに火をつけて店長を横目で見た。



「マイさん、ずっと辞めたがってるね。
もう辞めさせてあげたら?」

「そんなわけにはいかねーだろ。」


売り上げのあるマイさんを手放せない店側の気持ちもわかる。


「そのうち飛んじゃうんじゃない?」


私がそう言うと、店長はまたため息。



「あいつ、全然やる気ないくせに客は離れないからすごいよなぁ。」

「そうだね。でもやる気出されたら困る。
あたし越されちゃうじゃん。」


そう言うと店長はハハッと笑ってあたしの頭をポンポンと撫でた。

「一月もおめでと。」




毎月、あたしはこの言葉が欲しくて頑張ってる。

頑張ってよかったと思えるから。



どんな手を使ってでも
1番が手に入るならそれでいい。