「おはようございまーす」


あれから一カ月が経とうとしていた。



もう2月。




「美華ちゃん、一月もNo. 1おめでとう」


そう言ってくれたのは、キャストのマイさん。

27歳の先輩キャバ嬢。



かつてのNo. 1キャバ嬢はマイさんだった。







二年前、スカウトされて初めてキャバクラという場所に足を踏み入れた。

初めてのドレス。
慣れない高いヒール。




緊張で固まってたあたしに初めて声をかけてくれたのがマイさんだった。





マイさんはあたしがイメージしてたキャバ嬢とは少し違っていた。

黒髪のショートカット。
可愛いと言うよりは美人系。

今時のうるさい感じはなく、おしとやかで上品な感じ。



「マイです。よろしくね。」


何も知らないあたしにキャバ嬢の基本的なこと全て教えてくれたのはマイさんだった。




女のあたしでもマイさんがNo. 1だというのがわかるほど、マイさんはまぶしかった。


あたしはこのマイさんに憧れてこの店の入店を決めたのだ。






そしてあたしの目標はいつからか、
マイさんを抜いて自分が一番になることになっていた。







あたしがマイさんを抜いてNo. 1になったのは1年前のことだった。


あたしの売り上げが突然上がったわけではなく、
マイさんの売り上げが突然下がったのだ。





あれから何度かキッチンの奥からマイさんと店長の言い合いを聞いてきた。


「辞めさせてください」



マイさんのキャバ嬢としてのスイッチは突然オフになった。







そして今がある。
マイさんはあの頃のやる気は見えなくなったとはいえ、いつも私の次のNo. 2だ。


ただ、1年前のあの日から
あたしは一度もNo. 1をマイさんにも誰にも譲っていない。