あたしたちは雪道を手をつないで歩いた。
「おんぶ、する?」
あたしは無言で首を振った。
「じゃあさ、抱きしめてもいい?」
あたしは頷いた。
人の腕の中って、
どうしてこんなに落ち着くんだろう。
「美華ちゃん、ありがとう」
「何が?」
「美華ちゃんが育った場所に連れてきてくれて」
「翔も連れてってくれたじゃん。
それに……」
「それに?」
「ここに連れてきてくれたのは翔だよ。
翔が言ってくれなかったらきっとあたし、来てなかった。
ずっと。」
あたしは翔にキスした。
「あたし、怖かった。
水商売なんてさ、やっぱこっちじゃ偏見持たれてるし、おばさんにも汚い女になったなって思われたらどうしようとか、
お母さんの話しづらいなとか。
でも、よかった。
来れてよかった。
おばさんに会えてよかった。
お母さんの話聞けてよかった。
…翔と、ここに来れて良かった。」
しばらく翔はあたしをきつく抱きしめた後、
口を開いた。
「会いに行こう」
「ん?」
「美華のお母さんに、会いに行こう」
あたしは俯いた。
「会いたい。
…でも、怖い。
あたしのこと忘れてたら。」
「そしたら俺がお前のお母さん、一発ぶん殴る。
もうそれで終わりだ。
これからは俺らが家族だろ。」
あたしは涙が止まらなかった。
これは翔の優しさ。
あたしが本当はずっとお母さんに会いたかったことを知ってるから。
「俺はもう二度と親には会えないけど
美華は会える。
突き放されてもなんでも、会いたいと思ったら会えるんだ。
それって幸せなことだよ。
会いたくても会えなくなる前に、
会おうと思った時に会いに行こう。
俺も行くから。
俺が、美華を守るよ。
美華のお母さんがどんな人でも守る。
そして、受け入れてもらう。
これからは俺が美華のそばにいるからって、
美華のお母さんにも安心してもらう」
あたしは声を上げて泣いた。
あたしは全然不幸なんかじゃない。
お母さんがあたしを捨てたという過去があっても
ここまであたしを想ってくれる人がいるから
むしろ幸せだよ。
「てゆーか、俺も会いたいだ。
美華のお母さん。
結婚すること、認めて欲しいんだ。
どんな人でも、美華のこと生んでくれたお母さんってことに代わりはないんだから。
美華を捨てようがなんだろうが、美華を生んでくれたことありがとうって言いたい。
美華のお母さんがいなかったら、俺、美華に会えなかったんだもん。
俺の人生を変えてくれたのは美華のおかあさんでもあるんだよ」
…どうしよう。
好きが止まらない。
愛が溢れて、止まらない。
こんなに愛を感じたのははじめてだ。
こんなに泣けてくるのは初めてだ。
「翔、ありがとう…ありがとう……
好き…
…好き、翔…」
「知ってるよ」
翔が笑う。
