あたしはタバコを吸いながら窓の外を見下ろした。


ネオン広がる歌舞伎町。


「なんか今日、歌舞伎町にぎやかだね。」


あたしがそう言うとマナミは「は?」と驚いた。

「美華、なーんにも知らないよね!
今日、あの男のバーイベだよ!」


バーイベ。
バースデーイベント。

「あの男?」


「一ノ瀬翔!!!」








……翔。



「いくらホストに興味ない美華でも一ノ瀬翔くらい知ってるでしょ?」

「うん、まぁ…」

「すごいよねー。
まだ22なのにもう伝説だって!
美華のホストバージョンじゃん!(笑)」

「なにそれ(笑)」

「美華も一ノ瀬翔も、天職なんだろうねぇ。
こんなに若くして、しかも入店してすぐNo. 1になっちゃって、挙げ句の果てには伝説なんて言われちゃうんだもんね!」

「やめてよ。
その男のことは知らないけど、あたしは別に伝説でもなんでもないから。」



ただ、一番が欲しかっただけ。
誰よりも多くの人にあたしを認めて欲しかっただけ。

そして、一人でも多くの人に
あたしの存在を知ってもらいたかっただけ。




「………にしても、すごいねー。
この女の数。」

窓を覗き込むマナミ。
マナミの視線の先には、店から出てくる何十人もの女たち。


「こいつら全員一ノ瀬翔の客かな?」

マナミは感心したようにその光景を眺めていた。






なーんだ。
昨日は散々、仕事向いてないとか誕生日まで好きな女といたくないとか言ってたくせに、ちゃっかりしてんじゃん。

って。当たり前だけど。