あたしは首を振った。
素直に嬉しかった。
少しでも店長のためになったなら、それ以上はない。
もちろんあたし自身No. 1が欲しかったのもあるけれど、
ここにいればいるほど、店長のために頑張りたいと思えるあたしがいた。
感謝してもしきれない人だから。
「店長の夢って何?」
「夢?(笑)」
「そう。
あたしはね、日本一有名なキャバ嬢になること」
「んー、だったら俺は、この店を日本一有名なキャバクラにすることかな」
そう言うとあたしは笑った。
「美華、やっと笑った」
「へ?」
「ここ最近、ちゃんと笑ったの見てないなって思って」
「店長、あたしのこと見張りすぎ(笑)」
「翔となんかあったんだろ?」
店長は、あたしのこと本当よく見ててくれる。
「別になんもないよ」
今でも、
やっぱり店長には翔のことは話しづらかった。
すると、
「店長ちょっと」
と、あたしたちの話を割ったのは、マイさんだった。
店長はマイさんに呼ばれ、店の裏へと消えてった。
そこから、かすかに聞こえるのは
「やめたい」の声。
「まだ言ってるんだねー」
通りかかったマナミがそう言う。
「辞めさせればいいのに。」
「やっぱり店長的には売り上げあるキャストは辞めさせたくないんでしょー。」
そりゃそうだ。
店のことを考えるなら、マイさんはここにとって必要な人間。
だけど、あたしはどうしても
マイさんを憎んでしまう。
いつも翔の心のどこかにマイさんがいる気がして。
