「離してよ」

そう言うと翔があたしをギュッと抱きしめた。





「美華……心配なんだよ……
嫉妬してカッコ悪いのも自分でわかってるけど……」






あたしを逃さないため?
翔が1人にならないため?


その嫉妬は、愛情の延長戦なんかじゃない。

分かってる。
だから、嫌なんだ。




「アフター……行ってただけだよ……」


あたしは抱きしめる翔の腕からスルリと抜け出した。



「アフターで、シャワー浴びる意味がわかんないんだけど」

「分かるでしょ?
あんただって同じことしてるんだから」



翔は何も言わない。


自分の都合が悪くなると、何も言い返せなくなる。
いつものこと。






「あたしだって嫉妬してたよ。
あんたから知らない香りがするたび、辛かった。
だけど何も言わなかった。
我慢してたんだよ」





うつむく翔。




そんな顔が見たいんじゃない。


だけど、どうしようもない。




あたしたちじゃ、
普通の恋人同士にはなれない。







「あたしも、翔と同じなの。
欲しいもののためならなんだってする。
枕しないでNo. 1なんて、綺麗事って分かるよね?
翔だってそうでしょ?」



何も答えない翔。





「翔が近づいたのは、キャバ嬢の神崎美華。
あんたは、ホストの一ノ瀬翔。
あたしたち、最初から普通じゃないんだよ。
嫉妬できるのは普通の恋人同士だけ」