綺麗事は嫌い。


どんな汚い手を使ってでも
欲しいものは手に入れる。








あたしたちはそのバーを抜けて岩本さんの車の助手席に乗った。




「翔とは、噂通りなの?」

「うん」

「そっか。
No. 1になりたいのは、翔のため?」


「それもあるけど……
前に突然辞めたりして店に迷惑かけちゃったから。
店のためにも頑張りたい」


「美華でもそういうこと考えるんだ」




赤信号で止まった隙に、あたしの肩を抱き寄せ、唇を重ねた。





「あたしのことなんだと思ってたの?」


「金のためだと思ってたよ」


「お金なんて……ただの紙切れじゃん」


「俺もそう思うよ。
けど、美華は金以外信じられないような目をしてたから。
初めて会った日。」











2年前……確かにそうだったかもしれない。



あの頃のあたし、
愛情なんて知らなかったし、友達もいなかった。

心許せる人が誰もいなくて、

東京でたった1人だった。




信じられる人なんて、もちろんいるはずもなかった。