あたしは涙を拭いて、鏡に映る自分を見つめた。







「大丈夫……」











なんだってする。

No. 1のためなら。

あの看板を取り返すためなら。


翔をあたしだけのものにするためなら。














「……か」



遠くで声が聞こえる。





「美華!!!!!!」



耳元で叫ばれて、目が覚めた。





マナミの甲高い声が、いまだにこだまする。



「やばっ。潰れちゃった……」

「もー飲みすぎだよ」


マナミはそう言って水を渡してくれた。





「店長、張り切って昔の客呼びすぎ」

そう言うのは池田。


「美華の初日だぞ。
呼ばないわけにはいかないでしょ」

店長はそう言って、ソファーに座ってビールに口つけた。








「店長、ありがと」




そう、今日は初日なのにあたしは指名でいっぱいだった。

昔の客に、店長が連絡してくれていた。






「こっちこそありがとな。
でもあんま無理すんな」



店長との会話にマナミと池田がニヤニヤする。






「おい、お前ら(笑)
そーゆーのやめろ」


店長が少し赤くなる。







なんだか、昔に戻ったみたいだ。


いつも4人でいたあの頃。





幸せだった。


戻りたい……って、正直思ってしまう。






「やっぱり美華がいると店内全然違うよねー」




「そういえばアフター行かなくていいの?」


「あぁ、岩本さんだよね。
行かなきゃー。」

「無理すんなよ」

「全然平気」



あたしはヨロヨロしながら更衣室で着替えて

「おつかれさまー」
と、店を出た。