「あたし、また返り咲けるかな」

「美華なら大丈夫だよ」


店長のその言葉、
なんの根拠もないけど、安心するんだ。

その言葉で今まで何度も救われたから。





「なぁ、美華。
せめて店内ではそんな気まずそうにすんなよ」




あたしは顔を上げた。



「べつに……気まずくないけど……」


「美華って、意外と分かりやすいよな。
客の前では女優なのに(笑)」





ちがうよ……
あたしが分かりやすいんじゃなくて、店長があたしのことちゃんと見ててくれるからバレるんだよ。






「もう俺はお前に未練もないし、恨んでもない。
翔とのことも応援してるよ。
だから俺らが付き合う前の頃に戻ろう」


きっと、そう言ってくれるのは
あたしがこの店にいやすくさせるため。




その優しさが、つらいんだ。



いっそ恨んでくれた方がいい。




だけど、その優しさを利用してるあたしはもっと最低。
やってることは付き合ってるときと変わらない。




「俺は前みたいにお前を全力でサポートして、美華は売り上げる。
俺らは付き合うってより、そっちのほうが合ってるよ」






……だったらそんな寂しそうに笑わないで。




また甘えたくなってしまう。







「……そうだよね。
あたし、がんばる。
またこの店を大きくさせるよ」







「翔のことで悩んでるなら、俺でよければ聞くから。

そんな思いつめた顔すんなよ」











あたしはトイレに駆け込んだ。








その瞬間に涙が溢れ出した。













……ダメだ。


店長と話せば話すほど
優しさが染みて、同時に罪悪感でいっぱいになってしまう。