これ以上知らない方がいいに決まってる。


傷は浅い方がいい。


なのに……





翔の全てが知りたくなってしまう。




過去も全て
あたしと出会う前のことから知っていたいよ。








「マイさん……どうして今さら翔に会いに行ったりしたんだろう……」

「それは俺も知りたいよ」

「聞かないの?」

「聞けないよ。
まだ未練があったなんて、もし言われたら俺が今までしてきたこと、マイにとってただの迷惑行為になっちゃう気がして」

「迷惑行為って、池田はボロボロだったマイさんを救ったんじゃん」

「もしかしたら俺は、マイと翔を邪魔しただけなのかもなーって。」

「あんたって意外とネガティヴなんだね。」

「うるせーよ」




池田の、無理に作ったような笑顔が、見てて辛い。




「池田、教えてくれてありがとう。
今度お礼する」


「そんなんはいらないけどさ。


美華が返り咲いてくれればいいよ。
歌舞伎町のど真ん中。」



池田が言いたいことがすぐに分かった。

あの看板だ。



「すぐに奪い返すから。
翔の隣はあたしの場所。
マイさんはあんたに返すよ」



あたしはそう言い残して、その店を出た。