「翔じゃなきゃ無理って振られた。

その頃、ちょうど美華が入店してきた。」

「あたしが入ったのってちょーどあんたが振られた時だったんだ(笑)」

「そう。
まあ振られたんだけど、その頃からマイが俺んちで暮らすようになった」

「え?どういうこと」

「翔とマイって同棲してたみたいなんだけど、翔って全然帰ってこないどころか酔っ払って客の女とか家に連れ込んだりもしてたみたいで。
そのうちマイ、翔のいる家に帰るのも嫌になって俺んちに来たわけ。
そんでマイをなんとか翔と会わさないようにして、自然消滅で別れさせた。みたいなかんじ。」




「そうだったんだ……
マイさんと翔ねぇ……」



あたしはタバコをくわえて平気なふりをしてた。



「何も知らなかったの?」

「うん、なーんにも。
翔は、マイさんのこと客とか言ってたし」

「まあそれもあながち嘘ではないよ。
マイ、翔の店で指名して会いに行ってるんだ」

「は?何それ」

「ほんっと、俺があの頃必死でマイと翔を会わさなかった努力が水の泡だよ(笑)
マイの中にもう翔がいなくなったかなってようやく安心できた頃に、あいつ勝手に翔の店行ってんだもん(笑)」

そう言う池田は笑ってたけど悲しそうだった。





「マイさん、サイテーじゃん」


「けど、放っておけねーんだよ。
まじで美華と一緒(笑)」


池田の気持ちが痛いほどわかる。



「翔も最低だね。
マイさんにそこまでひどいことしてたんだ……」

「だから俺にとっては翔は最低なイメージしかないんだよね。
それでなんで美華が付き合ってられるのか本当謎。
絶対店長の方がいいのに」


「頭ではわかってるよ。
店長といた方が絶対辛くない。

でも翔といる時は辛いけど幸せなの」