「なんとなくそんな気はしてたの。
翔って意外と嘘が下手でさ……」


あたしは平喘を装って笑った。





「もっと、詳しく聞きたい。
知ってること全部教えて」



池田はあたしを心配そうに覗き込む。



「もう、騙されたふりは疲れた。
だから、お願い、池田」





そう言うと池田は口を開いた。





「美華があの店に入店する前からマイがずっとNo. 1だったのは知ってるよな?」

「うん」

「俺があの店で働き始めた頃、マイと翔はすでに付き合ってたんだけど。
翔と付き合ってくうちにマイはボロボロになってったんだよ。
もう精神的におかしくなってて」


「……うん」


「そのうち、店を辞めたいとか言い出すようになって。
そうじゃなきゃ翔と一緒にいれないとか、あの頃のマイはそんな訳わかんないことばっか言っては店長とかボーイを困らせてた。」

「今のマイさんからは想像つかない……」


「その頃から翔の噂ってすごくてさ。
マイを見てたら翔は噂のままの人間だってことも分かった。
あんな情緒不安定なマイを放って置けなくなってマイに俺にしとけって言った」

「かっこいいねその告白」

「お前ふざけてるでしょ(笑)」



こんな冗談でも言っておかなきゃ
あたしが泣いてしまいそうで。



「で、マイさんを翔から奪ったんだ?」

「奪えなかった…」

「は?」

「お前ちょっと笑ってるのやめろよ(笑)」


あたしはわざと池田をからかって見せた。


こいつとじゃ、しんみりもできなくて。