「もう、1人で翔を待つの、いやだから」


あたしはそう言って翔の腕からくぐり抜けた。





「この家にいると、どんどん翔が遠くに行っちゃう気がする。
あんたは有名人。
だけどあたしはどんどん忘れ去られてく。
距離を感じるの。」




「でも、なんで選りに選ってあの店なんだよ。
美華なら他の店も欲しがってるはずなのに」



「あの店じゃなきゃだめなの」



「店長がいるから?」



あたしは、何も答えられなかった。





もちろん、店長がいるからという理由もある。

店長を救いたいから。




だけど1番は、
マイさんが微笑む看板、
翔の隣の看板を奪い返したい。



……なんて言えなかった。