ためておいた湯船に花びらを敷き詰めた。






「美華ちゃん、化粧してる。
どっか行ってたの?」




鋭い翔。



「うん、あのね。
翔に話さなきゃいけないことある」



「何?
別れ話?」

翔はそう言って笑う。


冗談のつもりなんだろうけど、
あたしは全然笑えない。




「え?ガチじゃないよね?」


「違うよ(笑)」

あたしも合わせて笑う。



「実は、あの店に戻ることにした」




翔の顔から笑顔が消えた。



「あの店って?」

「わかるでしょ?
前いた店。」

「……店長がいる…?」





翔が不安そうな顔をするから
あたしが悪いことをしてるみたいだ。




「そうだよ」


「やだよ」






想定外の翔の言葉。





そして、あたしを抱きしめた。




「やだよ。行かないで」




その甘えた声。

あたしはいつも騙される。


あたししか知らない翔を見てる感覚になる。










きっと、マイさんだって知ってる。


マイさんだけじゃない。

アヤも、他の女も。
大勢。