first love

あたしは何も言わずに店に入った。



その瞬間に視線があたしに集まった。




突然辞めたあたしを、
みんなきっと軽蔑してるんだろう。

別にいい。




あたしがここへ戻って来た理由は
あんたたちには関係ない。





自分のためと
店長へのせめての償いだ。






あたしが奥の席に座ると、しばらくして店長が奥から出てきた。



ドキドキした。


何から、話せばいいのか……






「久しぶりだな」


何も変わらない店長。

ううん、少し痩せた?



久しぶりって言っても
あたしが勝手に家を飛び出したあの日からまだたったの1ヶ月。





「店長、ごめんなさい。
こんなところにまで来て、
でも謝らなきゃって思って……」

「いいよ、もう。
謝るなよ。」


店長はそう言ってあたしに酒を作って出した。





「あとね、こんなに店長を傷つけておいてなんだけど……」

あたしは俯いていた顔を上げた。




店長の顔……




泣いちゃだめ。

だめだ。







「なんだよ……(笑)」







泣く資格なんてないのに
あたしって本当ずるいよね。

最低だよね。




泣きたいのは店長なのに、


あたしが傷つけたのに。








「美華さ、戻っておいでよ」








言えなかった言葉を

店長が言ってくれた。






その瞬間、涙が溢れて止まらなかった。