first love

傘をあたしに傾けるのは、


翔。






「お前の居場所はもう歌舞伎町じゃねーだろ。
帰ろう」


翔があたしの手を握った。



あたしはどうすることもできない。

振り払えばもう戻れない気がする。


何かを聞いて傷つくのも怖い。







迎えに来てくれたんだから、
いっそ全て許しちゃえばいいんじゃないかな。


でもモヤモヤする。


どうしてマイさんに話してるの?


あたしだけじゃなかったの?






あんたの苦しみは
あたしだけじゃ背負えないの?












「聞きたいことがあるなら聞いてよ」


タクシーの中で翔はそう言うけど
あたしは何も答えられなかった。




「客ならそれでいいよ。
ごめん」







騙されたふりしてあげる。


傷つきたくないから。
知りたくないから。









あたしが浮かれてただけ。


自惚れてただけ。






翔はあたしだけのものじゃないし、特別でもなんでもない。




分かってたはずなのに。