「俺、家族いねーんだ。
父親は元々いなくて。
母親は病死してさ。」


翔はそう言うと寂しそうに夜景を見下ろした。





「あたしも…家族いない……」

「え」

「あたし、捨てられたの。親に。
だから施設で育ってきた。
家族いないの。あたしも。」



すると翔は微笑んだ。


「俺らって、似てるよな。」



そう言った翔は
それ以上何も聞いてこなかった。


家族のことは、人にはほとんど話したことなかった。
話したらたくさん突っ込まれて、苦しくなるって思ってたから。



だけど翔は何も聞いてこない。
それはあたしと同じことを思ったことがあるからなのかな。

あたしに興味がないだけかな。



わかんないけど、
翔といるのは気持ちが楽になる。

人にほとんど話したことのない家族のことまでなんの躊躇もなく話してしまうくらい。
自分でも驚いてる。


こんなに楽な気持ちで人と会話してるなんて。