「人と人が全てを理解し合うなんて無理だよ。
所詮他人同士。
分かり合えるなんて、無理。
それができたらきっと奇跡。」


翔の声がお風呂場に響いてた。


「でもさ、死ぬまで一緒にいれたらそんな奇跡も起きそうじゃん。
だから美華ちゃんか俺のどちらかが先に死ぬまでにお互いのこと理解できたらいいな」





あたしは降り向いた。

珍しく、真剣な顔の翔。




「ぷっ」

あたしは思わず吹き出した。


「うわ、なに笑ってんだよ」

「あんたがふざけてないの初めて見た気がする」


「はー?俺はいつも真剣なんですけど!」




あたしたちは笑い合った。




今の言葉が嘘でも本当でもどっちでもいい。


こんな風に笑いあえたらそれでいい。







この時間が永遠じゃなくても、

翔が言うように死ぬまで続かなくても

1分でも1秒でも長く続けばそれでいい。






期待なんてしないよ。

あたしだけのものになんてならないのは、
分かってるから。