翔に「好き」って言われるたび、嬉しさより切ない。


誰にでも言ってるその言葉、喜べない。


だけど今一緒にいるこの時間は
最高に幸せ。


好きだとか愛してるだとか
そんな言葉いらない。

一緒にいられるなら、それだけでいい。




あたしは翔の手をギュッと握った。





「…あたしと翔だけの世界に行きたいなぁ……」



そう言うと翔は爆笑した。


「なに」

「いや、なにそれ、可愛いんですけど」



あたしは、自分らしくないメルヘンチックな言葉に今更恥ずかしくなった。




「行く?美華ちゃんと俺だけの世界」

「もうやめて、恥ずかしいから」

「なーんて。
お前と俺だけなんてのは無理だけど。
明日から旅行しよ。」

「は?」

「明日から沖縄行きまーす!」




翔はそう言ってはしゃいだ。



「沖縄????」

「そう!
もう航空券もホテルも予約しちゃった!
仕事休み取れたからさ!」


翔はいつも突然だ。

サプライズ好きというか、
あたしを喜ばせる方法を知ってるみたい。



「急だね」

「美華、ずっと家じゃん。
たまには気分転換しよーぜ」


翔はそう言ってあたしを抱きしめた。


「楽しみ?」

「うん、沖縄初めて」

「沖縄ってさ、すげーのんびりしててなんていうか、空気が東京と全然違うんだよ。

いろんなこと忘れられるっていうか、開放感っていうか、
うまく言えないけど。(笑)」