あたしの家に入るなり、
ガラス張りの部屋に感動する翔。


「すげーーーー!
夜景ちょーキレイ!!!」


「なんかさ、この景色見ると全てを手に入れた気分になるの。」


あたしはグラスにシャンパンを注いで乾杯した。




二人で見渡す夜景。

東京全て
あたしだけのものになったような気分。


「翔って欲しいものとかないの?」

「なになに?プレゼントでもくれるわけ?」

「バカ。聞いただけ。
翔みたいに全てを手に入れた人ってこれ以上欲しいものあるのかなって。」

「それはお前も一緒じゃん?
お前欲しいものなんてあんの?」

「ないから聞いてるんじゃん!(笑)」

「ねーのかよ。(笑)」

欲しいものなんて、考えることさえなくなっていた。
考える前にいつも誰かがくれる。


お金も地位も手に入れたあたしに
これ以上欲しいものなんて思いつかなかった。



「俺さ、欲しいもの一つだけある。」

「なに?」







「家族」






翔がそう言った時、
あたしはまたその目に吸い込まれそうになった。


真っ暗で、まるで光一つ見えてないようなその目に。