「それは、お母さんのため?
店長のため?」


あたしは首を横に振った。





「…翔のためなんでしょ?」


あたしは何も答えなかった。









「また翔に会うの?」

「わかんない」

「ねぇ、美華!
店長をこれ以上裏切っちゃダメだよ!
わかってるよね?」

あたしは頷く。





「裏切らない。
だから、店長と別れる」

「美華、ちがうよ!
翔なんてやめて!
相手が悪すぎる!
あたしからのお願いだから…」

「ごめん、あたしもう無理。
翔のことどう頑張っても諦められない。
だから、マナミいうことも聞けないや、ごめん」





あたしは、きっと異常だ。


自分でも驚いてる。

あたしは頭がおかしいほどに
翔じゃなきゃだめになってる。

自分で思ってた以上に翔にハマってる。







今まで翔にハマってきた何人もの女も、あたしみたいだった?


あたしがバカにしてた女に
今あたしもなってるんだね。




翔にハマったら大切なもの何も見えなくなる。




大切な人も見えなくなるくらいなんだから、
No.1もいらなくなる気持ちも今なら分かる。


翔さえいてくれれば
他に何もいらないと、

翔はそう思わせる。






あたしは歌舞伎町で伝説を生んだなんて言われてきたけど、

本物のプロは翔。
あたしなんてまったく敵わない。



あたしはこれほどにまで人をハマらせたことなんてないし、
ハマらせ方も分からない。




歌舞伎町で愛されたように
翔にもできたらいいのに。




翔には何一つ敵わないんだ。