どれほど考えても、
正解なんて分からない。




こんなに大切にしてくれる店長を、
あたしは裏切れない。

翔のことは好きだけど
翔に飛び込めない。


翔の好きという言葉はあたしだけのものじゃない。
翔といたって幸せにはなれない。

傷ついてボロボロになるのは、
もう嫌だ。

翔のことばかり考えておかしくなりそうだった毎日に戻りたくない。




あたしを一人にしないでくれるのは
店長だけ。

愛情も安心もくれるのは店長。












「美華、最低。」


仕事が休みだったマナミが、店長のいないこの家に来てくれていた。


「言われると思った。
もっと怒っていいよ」


マナミはあたしをジッと見つめる。



「美華、おかしいよ。
また翔に洗脳された?」

「そうなのかな。
会うとやっぱりだめだ」


あたしはため息をついてソファーに寝そべった。





「あたしだってバカじゃないから分かる。
翔といても辛いだけ。
店長を裏切ることもできないし…でも……」


「翔のどこがそんなにいいわけ?」

マナミは完全に呆れてる。


「どこってゆーか…」

「全部?」

マナミはあたしを見てニヤニヤしてる。


「何笑ってんの」

「いや、なんか美華って翔の話してるとき可愛いなぁって」


あたしは少し照れながらタバコに日をつけた。