翔の腕の中で、久しぶりにぐっすり眠れた。



目が覚めて、昔みたいに寝ている翔にキスして起こす。

翔は寝ぼけながら布団の中であたしを抱きしめる。



「美華ちゃん…」

翔は目をつむったままあたしの胸を吸ったりしてた。

「赤ちゃんかよ」

あたしは笑いながらケータイに手を伸ばした。



その瞬間に自己嫌悪でいっぱいになった。





着信履歴は店長で埋まってた。



「わぁ…」

あたしのケータイを覗き込む翔。



それから、マナミからの何件かのメール。



《店長が心配してるから電話出ろ!
それから掲示板あんたと翔のことでいっぱいになってる。写真も出回ってる。聞きたいこといっぱいあるからあたしにも電話しろ!》




あたしはため息をついた。



「戻んなきゃ…」

あたしは服を着ようとするが、翔に後ろから抱きしめられて動けない。

「離してよ」

「やだ、帰んないでよ」

また始まった。
翔の甘い声。

あたしはいつも、何も言い返せなくなるんだ。



「なんて、ごめんな。
店長、怒るよな。
俺も行っていい?」

「やだよ。
あたしがちゃんと話す。」

「俺のせいにしろよ」

「ううん、ちゃんと正直に全部言いたいの」



翔はまだ抱きしめる手を緩めようとしない。



「ねぇ、離して。
店長のとこ行かなきゃ」

「ごめん、分かってるんだけど……離したくねぇよ。
また美華が帰ってこない気がして…」



そう言う翔がなんだかとてつもなく可愛く見えて思わずキスした。



「約束する、絶対帰ってくるから。」

「店長と別れられる?」

「うん。」


翔は小指を差し出した。

「指切りげんまん」

あたしは照れながらも翔の小指に自分の小指を絡ませた。