「あのさ、こんなとこで泣かないでくれる?
俺、他に客待たせてんだけど。」


翔のため息。

いくらVIP席とはいえ、迷惑だよね。


「…ごめん……」

あたしは涙を拭いて立ち上がった。




かっこ悪い。

もうやだ。



これ以上自分を嫌いになりたくないのに。




あたしは翔に連れられて出口の方へと歩いてった。





「かっこ悪いね、あたし。
迷惑かけてごめんね。」

店を出たところで翔にバッグを手渡された。



「美華、今、幸せ?」





初めて会ったあの日、
「幸せそうじゃない」と言った翔。

確かにね。
あの時はそうだったのかも。



だけど、翔と過ごす毎日は少なくともそれまでよりは幸せだったよ。




もしあの日々を幸せというのだとしたら、


今は……



「幸せだよ」







あたしは翔に笑いかけた。



「じゃあね」



あたしは歩き出す。


もう来ない。
会わない。

これが最後。



「……美華!」



なのに、翔…









振り向くと抱きしめられてた。




「えっ、翔……」


「嘘つくな、幸せじゃないくせに」