食人姫

俺も由奈も、何も言えなかった。


これは、女の子が儀式の前に書いていて、この時点で死を受け入れていたのだろう。


中学生の女の子が死ぬ為に儀式を行う……それは、谷に住む人達の為に。


家族とどれほど仲が良かったのかが、最後の一文から読み取る事が出来た。


「……麻里絵も、こんな思いなのかな。大好きな人達の為に、死のうとしてるのかな」


由奈の声に、いつものような元気はない。


「俺は……麻里絵の命を犠牲にしてまで助かりたくない」


巫女になった女の子は、俺達が襲われた化け物に食われたのだろう。


死が迫るあの感覚を味わった俺としては、麻里絵に同じ思いをさせたくない。


「とりあえずこれは大きな手がかりだよな。この箱は何が……」


と、ノートと一緒に入っていた木箱を開けると……中には布。


それを開いてみると……干からびた、木の枝のような物が出てきたのだ。


なんだこれ……こんな所に隠してあったわりに、良く分からない物だな。


「大輔君……そ、それって、人の指じゃない?」


その言葉に、一瞬俺は固まったけど、すぐに布で包んで蓋をして床に置いた。


私はそこにいる……今のが人の指だとすると、幽霊が言っていた「私」とは、この指の事だったのかと、怖くなったから。