食人姫

「はぁ……はぁ……」


由奈から離れて、状況を整理する。


深呼吸しながら、ゆっくりと。


「な、何!?私がそんなに怖いわけ!?心配して損した!」


さっきのは夢か幻か……それにしてはあまりにリアルに血飛沫を感じた。


肉が裂かれて、内臓が手に触れた感覚があった。


生温かくてぶよぶよした、気味の悪い感覚が。


それにあの顔は……由奈にどことなく似ていた気がする。


「由奈、俺に血は……付いてるか?」


「え?どこか怪我した?んー……汗が凄いけど、血なんか付いてないよ」


リアルに感じたのは気のせいか。


それとも、床で弾けた消えた血のように、俺の身体に付いた血も消えたのか……。


もしかすると、化け物をなんとかしないとと思った焦りが見せた、ただの幻だったかもしれない。


「いや、だったら良いんだけど……」


それでも、幽霊が指差していた場所と言葉は気になる。


俺は床に転がる懐中電灯を取り、さっき見た幽霊が指差していた方に、四つん這いで近付いた。


そこを照らすと、さっき調べた木製の箱があるだけで、中身は空っぽ。


私はそこにいる?


意味がわからないまま、その箱を転がして、側面や底に何かあるのかと見てみたけど……そうでもないようだ。