食人姫

その話を聞いて、この場にいた誰もが言葉を失った。


そりゃそうだよな。


33年前の事すら分からないのに、1000年ともなれば言い伝えのレベルで、正しいのか誤っているのかさえも分からない。


誰も、本当の事を知らない可能性すらあるのだから。


「……だからって、何もしないなんて事はないよね?」


そんな雰囲気の中、沈黙を破ったのは直人。


いつもは仕方なく哲也に付いて行動しているという印象を受けるけど、何かを考える時はこれほど頼りになるやつはいない。


「何か思い付いたのか?ガリ勉。1000年前だぞ?タイムマシンでも作ろうってのか?」


「哲也は黙っててくれないか。そんなバカな考えしか思い浮かばないならね」


なかなか言うようになったな、直人も。


哲也にそんな事が言えるやつはそうはいないだろう。


「僕は父さんに、大学は行っても良いけど、卒業したら谷に戻って来いって言われている。哲也達も言われてるよね?」


そう言われれば、俺も父さんにそう言われたな。


その時は、谷の人口が減少しない為に俺を谷から出したくないんだとばかり思っていたけど、もしかして……。