食人姫

「何?私、何か変な事した?」


脱いだジーンズを持ち、不思議そうに自分の身体を確認する由奈。


いや、もうその格好が変だろ。


「変って……なんでいきなり脱いでんだよ!俺には麻里絵がいてだなあ……」


焦るな俺、焦っていると悟られるな、俺!


頭の中はもうパニックだけど、外見だけは何とか平静を保っていると……。


「……何勘違いしてんの?私はいつもこの格好で寝てんの。エッチな事しか考えてないんだから」


「そ、そんなんじゃねぇよ」


……思いっ切り考えていた自分が悲しい。


「はいはい、分かった分かった。私が親友の彼氏とそんな事するはずないでしょ。バカな事言ってないで寝よ寝よ」


そう言うと、ジーンズを畳の上に放り投げ、由奈は布団の中に入った。


くう……何なんだよこの状況は。


久し振りに谷に帰って来たその日に、昔からの友達とは言え、女の子と二人で同じ部屋で寝るなんて状況、普通なら期待するだろ!


……まあ、普通ならな。


俺達を襲った、あの化け物の事を考えると、スーッと頭の中が冷静になる。


あれは一体何だったんだろう。


儀式が終わっていない人が夜道を歩くと化け物に食われる。


おじさんがいたから、あの化け物は姿を消したのかな。