その人影から、黒い手のような物が伸びる。
俺に向かって伸びるそれは、見ただけで禍々しい憎悪に満ち溢れているという事が分かるほどに、黒く、そして悲しみを感じた。
哲也の部屋で聞いた、谷のおっちゃん達が言っていたという人を食う化け物を前にして……俺はあまりにも無力。
身動き一つ取れず、ただ由奈の手を握り締めて、ガタガタと震える事しか出来なかったのだ。
黒い手が、俺の顔を覆うように広がって行く。
もうダメか……せめて、由奈だけはと、握った手を放そうとした時だった。
「お父さん!早く来て!」
死ぬかもしれないと諦めそうになった瞬間、その声と共に視界が開けたのだ。
黒だけだった景色が、さっきまでの谷の景色に切り替わり、道の先から光とおじさんが走って来るのが見える。
「大輔!大丈夫!?危なかったね……間に合って良かった」
俺達に駆け寄り、今にも泣き出しそうな顔を向ける光に安心した俺は、腰から下の力が抜ける感覚に襲われて、地面に座り込んだ。
何なんだ、何なんだよ今のは!
人を食う化け物なんて、生まれてから一度も聞いた事がなかったのに!
俺に向かって伸びるそれは、見ただけで禍々しい憎悪に満ち溢れているという事が分かるほどに、黒く、そして悲しみを感じた。
哲也の部屋で聞いた、谷のおっちゃん達が言っていたという人を食う化け物を前にして……俺はあまりにも無力。
身動き一つ取れず、ただ由奈の手を握り締めて、ガタガタと震える事しか出来なかったのだ。
黒い手が、俺の顔を覆うように広がって行く。
もうダメか……せめて、由奈だけはと、握った手を放そうとした時だった。
「お父さん!早く来て!」
死ぬかもしれないと諦めそうになった瞬間、その声と共に視界が開けたのだ。
黒だけだった景色が、さっきまでの谷の景色に切り替わり、道の先から光とおじさんが走って来るのが見える。
「大輔!大丈夫!?危なかったね……間に合って良かった」
俺達に駆け寄り、今にも泣き出しそうな顔を向ける光に安心した俺は、腰から下の力が抜ける感覚に襲われて、地面に座り込んだ。
何なんだ、何なんだよ今のは!
人を食う化け物なんて、生まれてから一度も聞いた事がなかったのに!



