食人姫

俺が親父さんに殴られている間にも火の勢いは増して、集会所を完全に包み込んだ。


中からの声が完全に聞こえなくなり、俺が目を覚ました時には、集会所は完全に焼け落ちていた。


それでも炎はまだ燃やし足りないと言わんばかりに、天に向かって荒れ狂う。


「大輔君、大丈夫?」


由奈に肩を借り、なんとか起き上がった俺は、それを見ながらただ立ち尽くした。


小谷実香は親父さんを食った。


儀式を済ませた人間には、化け物は近寄れないはずなのに、実香は平気で親父さんに近付いた。


その事は、指を持っている俺にも近付けた事から不思議には感じない。


だけど最後のあれは何だ?


親父さんを食った時の姿は……化け物そのものだった。


もしかして、俺を助ける為に、化け物へと変化するのを抑えていたのかもしれない。


谷の祖先が呪い師を殺害し、この血が呪われてしまったと思い込んで。


それを紛らわす為に女の子を殺して肉を喰らった。


今思えば、大昔の飢饉の時に、巫女が犠牲となって谷の人は飢えをしのいだのかな。


本当の事は知る事が出来ないけれど、その尊い犠牲を、谷の人達は歪んだ儀式として継承して行ったのだろう。


でもそれも……歴代の巫女達の力を借りて終わった。


俺と由奈の二人だけを残して。