食人姫

痛みに耐え、せめてもの抵抗とばかりに声を上げると、親父さんの表情がますます険しくなった。


「テメェに何がわかりやがる!!世の中なあ、理屈や常識ではどうにもならねえ事があるんだよ!!俺の気も知らないで、テメェが実香を語ってんじゃねえぞ!!」


耳元で怒鳴られ、再び打ち付けられた硬い拳。


地面に叩き付けられるように倒れて、親父さんを仰ぎ見る。














ダメだ……この人には何をどうやっても勝てない。













谷の人間は、この業火に焼かれて息絶えただろう。


それを引き起こした俺が死ぬというのが、俺に与えられた罰なのかもしれない。


間違いなく殴り殺される事を覚悟して、親父さんが伸ばした手を見詰める。


その手が俺の髪を掴み、立てない俺をグイッと引き上げる。


後何度この拳を食らったら死ぬだろう。


もう焦点が定まっていなくて、頭がフラフラする。


殴られた痛みが過ぎて、逆に痛みを感じなくなっていた。


何発……と言わず、あと一発でも食らえば死んでしまいそうだ。


そして、親父さんの拳が再び振り上げられる。


もうダメかと、死を覚悟したその時だった。



















親父さんの背後に……小谷実香の姿が見えたのは。