食人姫

そうだと信じていたもの全てが覆されて、俺はどうすればいいのか。


呪い師の怨念を鎮める為に儀式を行うというわけじゃなく、谷の人間も知らない本当の儀式の意味は、犠牲になった巫女を鎮めるという事。


だとしたら……谷の人間が犯した過ちを、過ちで上塗りしているだけじゃないか。


1000年以上かけて蓄積された巫女達の怨念が、谷の人間を恨んで襲っているだけだ。


だからあの化け物は……ニクイ、コノチノモノガ、と言っていたのか。


呪い師は関係なかった……これは、谷の人間が犯した罪の代償だったんだ。







「死んだ私達に出来る事はない。時が来れば、私も化け物になってしまうから。私達は谷を救いたかっただけ……それは今も変わっていない」







そう言った直後、実香は俺の前から消えた。


実香だけじゃない。


俺を取り囲んでいた化け物……歴代の巫女達も、次々と姿を消して、俺だけが残されたのだ。


消え行く前に見た巫女達の表情はどこか悲しげで、人を食う事を望んでいるのではないんじゃないかと思えた。


この儀式の夜の、ほんの僅かな時間……歴代の巫女達は、本当の自分を取り戻して、そしてまた化け物へと変わって行く。


それこそが、この血の呪いだと思わずにはいられなかった。