食人姫




「うっ!おえっ……ハァハァ……」



猛烈な吐き気が、胃から食道へと伝わるけれど、丸一日以上何も食べていない俺の胃袋からの逆流は何もなかった。


それでも、ただ嘔吐の苦しみだけは感じて、何とか呼吸を整えようと深呼吸をする。





「今のが私達の記憶。巫女は……谷を守る為に食われて、谷を恨んで化け物になるの」





いつの間にか元の姿に戻っていた実香が、背後にいる化け物達に呼びかけるように振り返った。


すると……化け物達は、生きていた当時の姿を取り戻すかのように、人間の姿に変わり始めたのだ。


「う、嘘だろ……」


衝撃の事実とは、まさにこの事を言うのだろう。


儀式や化け物の話を聞いたのは、ごく最近の事だけど、この化け物達は呪い師の怨念だと思っていた。


いや、俺だけじゃなく、化け物の起源を知っている人達なら、全員がそう思っていたに違いない。


だけど……そうじゃなかった。


だったら、何の為に儀式を行っているんだよ。


化け物を鎮める為に儀式を行って、生け贄にされた巫女はまた化け物になる。


呪いや怨念なんかじゃなく、人が生んだ儀式で巫女の怨念が積み重なってるって事かよ。