食人姫

麻里絵の手を離さないように、さっき登って来た山の斜面を下り、お地蔵さんまで辿り着いたのはかなりの時間が経過してから。


神社の方が騒がしくない事を考えると、光の変装はバレていない。


「大輔君、私……やっぱり戻るよ。もしも光君が見付かったら……」


哲也みたいに殺される。


そう言いたいのだろう。


「哲也がいた事で、絶対に警戒が強くなってるはずだ。そんな中で戻ったら、絶対に見付かってしまうだろ。そうなったら、光も麻里絵も死ぬ事になる。そんなの……嫌だ」


侵入者は容赦なく殺す。


哲也の爺ちゃんなら、間違いなく猟銃を撃つに違いない。


哲也も光も、麻里絵を助ける為だけに、犠牲になる事を覚悟で神社に行ったんだ。


そうでなければ、死ぬと分かってて囮になったりはしないだろう。


光だって、バレたら殺されてしまう。


どれだけ上手く行っても、明日には正体がバレて殺される。


仲間の為に、犠牲になる道を選んだんだ。


街の高校の友達には、仲間の為にそこまでやるやつなんていない。


この谷に生まれて、兄弟のように育ったから、仲間の意識は強いんだろうな。


そう思うと、二人の覚悟を無駄にする事なんて出来ない。