食人姫

「大丈夫です!巫女様は儀式の間におられます!」


しばらくして、本殿の様子を見に行った警護が戻って来た。


「ふん、巫女様を奪還しようとしたのでないなら、ただのわがままか。それほどわしが憎かったか?残念じゃったのう。ガキの遊びには付き合ってられんのじゃ。誰ぞ、これを処分しておけ」


哲也の遺体に近寄り、動かなくなった身体を蹴飛ばして、社務所へと戻って行った。


自分の孫を……こうも簡単に殺せるのか?


儀式の為とは言え、まるで物みたいに。


その、とても人間とは思えないような所業に、俺の震えは止まらない。


心臓の音が、警護に聞こえてしまいそうなくらい大きくなっていて、立っているのもやっとだ。


そんな中……一人の警護が哲也の遺体に近寄り、ガクッと崩れ落ちたのだ。


爺ちゃんは平然と殺してみせたのに、あの人は……。


「おお……て、哲也。哲也ーーーっ!!なんでお前はこんな所に来たんだ!何の為にここに……」


天を仰いで号泣しているのは……哲也の親父さんだった。


俺達の見張りをした後、警護としてここに来たのだろう。


あのまま家にいれば、哲也は死ななかったのかもしれないと思っているのだろうか。


親父さんの泣き声は、暫く谷に鳴り響いていた。