食人姫

賽銭箱の周囲に警護はいない。


このチャンスを逃すまいと、生け垣を越えて身を潜める。


このまま山を下りて、谷を出れば良いのだけど、何とかして哲也に、麻里絵を救出した事を伝えたくて。


足元をペンライトで照らし、音を立てないように広場の方に近付く。








「はっ!どうした!!ただ見てるだけじゃ俺は死なねえぞ!化け物は俺を食えねえからな!」







こういう挑発は得意だな、哲也は。


警護達の注意を完全に引き付けてくれている。


このまま、哲也も山を下りてくれると良いんだけど。


そう思って、さらに広場に近付こうとした時だった。











「お前ら、ガキ一人殺せんのか!」









と、最近聞いた怒鳴り声が辺りに響いたのだ。


「出やがったな、クソジジイ!」


「クソジジイとはなんじゃ!哲坊……わしは悲しいぞ。バカだバカだとは思っていたが、まさかここまでとはな」


大きく、まるで見せ付けるかのように首を横に振り、嘆いてみせる哲也の爺ちゃん。


手には猟銃。


まさか孫を撃たないだろうと思って見ていたけど……。















爺ちゃんは、素早く猟銃を構えると、引き金を引いて、哲也めがけて弾を発射したのだ。